羽仁未紗 VIVA OPERA 2
「アイーダ」は、そもそも1世紀余り前、スエズ運河の開通を記念した式典に、ヴェルディが頼まれて作曲したというだけに、その壮大で絢爛豪華な舞台、あまりにもドラマティックな物語、迫力横溢なる音楽は、世界の大舞台にこそふさわしい。
「蝶々夫人」で紹介した、世界一小さくとも大きな感動を与えてくれるニューヨークのアマトオペラも、この「アイーダ」だけはストーリーを追うに精一杯で手に負えない。
だから私たちもまた世界各地で観た、それだけにさまざまな想い出の詰まっているオペラの代表的な舞台。
芸術性というよりは、こけ脅かし的な迫力で圧倒してくれたのは、古代ローマの遺跡がそのまま舞台となり客席になっているヴェローナの野外劇場アレーナの大舞台。大遺跡を取り巻いておびただしい松明が焚かれ、客席のあちらこちらに古代の兵士の群れが立ち並び、舞台にはなんと大きな象さえ登場する。通いつめたニューヨークのメトロポリタン・オペラでさえ数頭の馬に過ぎなかったのに。
ただ6月のヴェローナは、風がそよとも通らず全員汗びっしょり。休憩時にはわざわざ外に出て離れたレストランに水を買いに行く。それもいい思い出か。
ロンドンはロイヤル・オペラハウスでの「アイーダ」は、もう20年も前だったか。
開演前の拍手に驚いて振り返ると、二階正面のロイヤルボックスにチャールス皇太子と当時のダイアナ妃が着席したところ。
オペラは荘厳に続いていたが、途中で振り向いてみると、なんとダイアナ妃、口もおさえずの大あくびの真っ最中。その後幾度か観察したが、妃がちゃんと舞台を観ているシーンにはついぞお目にかかれなかった。あの新参のロイヤファミリーは、ロイヤルオペラにはなんの関心もなかったらしい。
日本でももちろんいくつかの「アイーダ」は観たが、世界のディーバ、ディーボ、オーケストラがやって来てはいても、やはり、なんだかなぁ、という気にさせられるのはなぜだろうか。劇場のせいか、観客のせいか、あるいは日本の空気のせいだろうか。
だから私は、世界に出かけるたびに「アイーダ」に会いに行く。たとえ“定食”だといわれようとも、本場の「アイーダ」に。
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