佐山 透(さやま とおる)ドットコム

羽仁未紗のVIVA OPERA  Ⅱ-8

Cavalleria Rusticana
&
Pargliacci

『カヴァレリア・ルスティカーナ』はマスカーニ作曲、『パリアッチ(道化師)』はレオン・カヴァッロ作曲。別人の作品。だから、ふたつのオペラで歌われるアリアの数々から受ける印象も、似てはいるものの大きく違っている。ストーリーを見ても、もちろん続きものでもない。

Cavalleria Rusticanaこのふたつの、それぞれに完成されたオペラだが、必ずといっていいほど同時の上演されるのはなぜだろうか。  

舞台が前者はシチリア、後者がカラブリアというようにイタリアでもぐっと南のはずれの、しかも田舎町という共通点があるからだろうか。どちらも上演時間が約70分で短すぎるから、ふたつ合わせて一本と考えたのだろうか。  

Pargliacciいや、そうではない。どちらも19世紀の終わりごろイタリアで流行していたヴェリズモ・オペラだから、というのが正解。というより、このふたつのオペラからヴェリズモ・オペラのブームが始まったというべきだろう。  

Cavalleria Rusticanaヴェリズモverismoとは真実主義と訳されることが多いが、むしろリアリズムといいかえたほうが近い。それまでのオペラは、古代のエジプトや神話などから材を採ったり、歴史的なできごとをもとにしたり、王侯貴族の世界を描いたりするものがほとんどだったのだが、この時代から、どこか田舎の、しかも名もない庶民を題材にした、写実的、現実的なオペラが制作されるようになった。つまりのちの世の、新聞の3面記事風、テレビのワイドショーの再現ドラマ的なものがもてはやされるようになった、ということ。  

そうとわかってみると、このふたつには大きな共通点がある。時代の流れ、という共通点が。   

 

Cavalleria Rusticana

 

Cavalleria Rusticana『カヴァレリア・ルスティカーナ』とは、田舎の騎士、田舎侍の意味。このどこか馬鹿にしたようなネーミングにも、庶民のどうでもいいようなお話、といったニュアンスが込められているようだ。

Cavalleria Rusticanaシチリアの小さな村の若者トゥリドゥと村娘ローラは恋人同士だったが、トゥリドゥが兵役に出ているあいだにローラは馬車屋のアルフィオと結婚してしまう。 

除隊後にそれを知ったトゥリドゥは、ローラへの当てつけに同じ村の娘サントゥッツァと付き合い始める。

Cavalleria Rusticanaサントゥッツァはその気になるが、トゥリドゥはローラを思いきることができず、再びローラに愛をささやき、復縁を迫る。それを知ったサントゥッツァは嫉妬に狂ってローラの夫アルフィオに告げ口をし、アルフィオとトゥリドゥが決闘。トゥリドゥが殺されてしまう。

Cavalleria Rusticanaこれだけのストーリーなので、狭い村の中のつまらない事件としかいいようがない。

だが、こうしたつまらない日常感が当時のひとたちに大いに受け、このわずか2年後に『Pargliacci』が制作発表された。

Cavalleria Rusticanaサントゥッツァの激しく歌い上げる「ママも知っているように」、死の前のトゥリドゥが叙情的にうたう「母さん、あの酒はきつかったね」のふたつのアリアが聴きどころ。

Cavalleria Rusticana

 

 

Pargliacci

 

Pargliacci『パリアッチ(道化師)』は、シチリアから狭い海を渡ったイタリア半島の長靴の先、カラブリア地方の、これも小さな村が舞台。

このなんの娯楽もない村に、看板女優ネッダを擁する旅回りの一座がやってくるというので、村人たちは大喜び。

Pargliacciところがやってきたネッダは、昔付き合っていた村の青年シルヴィオと密会、ふたりで闇の中に消えていく。

そのようすを見てしまった座長で、ネッダの夫でもあるカニオが嫉妬に苦しむ、というのがこのオペラの始まり。

Pargliacci翌日いよいよ幕が上がるが、この芝居はあまりにも現実に似ていた。

ネッダ扮するコロンビーナがカニオ扮するパリアッチョの留守中に浮気をし、それを知ったパリアッチョはコロンビーナに、相手は誰だ、と詰め寄る。

Pargliacciつまり実際の夫婦が夫婦役を演じ、しかもともに妻の浮気がばれているという設定なので、劇中劇の芝居にも現実との区別がなくなってくる。

パリアッチョを演じるカニオは、次第にわれを忘れ、本気で怒りをあらわにし、ついには舞台上で妻を刺し殺してしまう。

Pargliacci死の間際、さらに激しく問い詰められたコロンビーナは、ついに浮気相手の名を、シルヴィオ、と告げる。

嫉妬に狂ったカニオは、客席にいたシルヴィオをも刺し殺し、騒然となる芝居の中の観客に向かって、

「これで道化はおわった!」

と叫ぶ。

と、これまた荒っぽくも激情的な“痴話喧嘩“のなれの果て、だが、ネッダの「鳥の歌」とカニオの「衣裳をつけろ」と、ふたつのアリアはオペラの枠を飛び出して、独立した有名曲でもある。  

 

Pargliacciふたつ続けて鑑賞してみると、『パリアッチ』のほうがドラマティックであるだけに高く評価されるらしく、ほとんどこの順序で上演されるが、時には『パリアッチ』『カヴァレリア・ルスティカーナ』の順になることもある。

そして、これもまれにではあるが、主役級の3、4人が同じような役で両方に出る、ということもあるのでそれもまた面白いかもしれない。

 

Pargliacci

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