佐山 透(さやま とおる)ドットコム

羽仁未紗のVIVA OPERA  Ⅱ-5

Un Ballo in Maschera  

 Un Ballo in Maschera

 

Un Ballo in Maschera『仮面舞踏会』は、奇妙なオペラといわざるを得ない。

というのは、同じストーリー、同じ歌、同じ曲でありながら、舞台がボストンとスウェーデンのふたつのバージョンがある。

Un Ballo in Mascheraどうしてこういうことになったのかといえば、このオペラは1798年に実際に起こった事件、スウェーデン国王のグスタフ3世暗殺を題材にとったものだが、ヴェルディが1858年にこのオペラを完成させたとき、微妙な国際問題になることを恐れたときの政府が上演を許可せず、仕方なく舞台を当時の新大陸、アメリカはボストンに移し換えての初演となったのだが、そのため完成から初演まで2年も待たなければならなかったし、不自然な舞台設定のため、ヴェルディ作品としては例外的な不人気でもあった。

Un Ballo in Mascheraやがて国際政治の姿も変わり、近年では舞台も人物も原作のスウェーデンに戻しての上演が多くなってはいるが、それでもやはりボストン・バージョンを守っているケースも少なくない。

Un Ballo in Mascheraこうした理由によって、主役のテノールが、ボストン総督リッカルドだったり、スウェーデン国王グスタフ3世だったりするが、それ以外は変わっていないので、もとのヴェルディを味合うという点では少しも損なわれることはない。

Un Ballo in Maschera話は単純。グスタフ3世が忠実な副官であり親友でもあるアンカーストレイム伯爵の妻アメーリアに恋してしまい、立場もわきまえずにいい寄るが、アメーリアの心は貞淑そのもの。ところが怪しげな占い女や、反国王派の人物などが絡んで、事態は複雑になってくる。

Un Ballo in Mascheraそんなときの仮面舞踏会。妻が裏切っていると思い込んだアンカーストレイム伯爵は、舞踏会の席上、国王を射殺してしまう。

死の際の国王は、アメーリアの貞淑さをたたえ、アンカーストレイムを許し、皆に感謝して世を去っていく。

Un Ballo in Mascheraという、各人の思い込みのすれ違いが招いた悲劇、というわけだが、いちばんの見せ場は、大きな悲劇の予感をはらみ、それだからこそいっそう華やかな舞踏会ということで、かの三島由紀夫『鹿鳴館』にも通ずる壮大な心理悲劇だが、この緊迫した華やかさをいかに描くかが舞台の成否を分ける。このオペラは数回鑑賞したが、成功率は5割というところではなかったろうか。

Un Ballo in Maschera聴きどころはいくつもあり、アメーリアの「ここは恐ろしい場所」(第2幕)、グスタフ3世とアメーリアのデュェット「私はあなたのそば」(第2幕)、レナートが嫉妬の怒りでうたう「お前は心汚すもの」(第3幕)など、それまでのヴェルディ作品になおドラマ性を増した名曲ぞろい。

Un Ballo in Maschera注意すべきは、脇役にしては登場場面が多すぎる小姓オスカル。ソプラノ歌手の男役なのだが、高音域3点ハを駆使する難しい歌唱で、上演成果の行方を握ってもいる。日本人歌手が演じることも多く、ここいらに目を留めるのも通らしくていいのではないか。

 

Un Ballo in Maschera

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