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羽仁未紗のVIVA OPERA  Ⅱ-3

Manon Lescaut  

 Manon Lescaut

Manon Lescautアベ・プレヴォの大ヒットした悲恋小説のオペラ化だが、まさに一世を風靡したといえるこのスーパーベストセラーには多くの作曲家、劇作家が群がり、競い合うようにオペラ化、舞台化したが、中でもジャコモ・プッチーニによるこのオペラが最も成功した作品といえる。Manon Lescaut10年前に作られたマスネのオペラ「マノン」などのほうが優れているとも思えるのだが、名声的には足もとにも及ばない。プッチーニという名前のせいだろう、と思われがちだが、そうではない。この作品はプッチーニにとって3作目でしかなく、このころの彼はまず無名の作曲家だった。この「マノン・レスコー」でようやく世界的に知られたのだから、ついていたというか、成功する人物にはなにかがあると思いたくもなろう。

Manon Lescautまずこのオペラは作劇術から見ると完全な失敗作だ。決定的なことは、幕と幕のあいだの飛躍が大きすぎて、ストーリーがわかりにくい。従って主役の恋人たちへのシンパシーも持てず、悲しみも少しも迫ってこない。なぜこんな作品が、と不思議でもあるが、そこの原作の素晴らしさと、大衆心理の不可思議さといったものがあるのだろうか。

Manon Lescaut舞台は18世紀末のフランスで、アミアンの旅籠に近衛軍曹のレスコーとその妹のマノン、そして年老いた財務官ジュロームが馬車でやってくる。マノンが修道院にはいるのを送ってきたのだったが、たまたまその場にいた騎士デ・グリューがマノンの美しさに心奪われ、マノンをさらって逃げてしまう。

Manon Lescautところが場面が変わると、マノンはなぜかジュロームの愛人に収まっており、ぜいたくに暮らしている。そこにまたまたデ・グリューが現れて、再びマノンを連れて逃げようとするが、ジュロームに見つかって、デ・グリューではなくマノンのほうが逮捕されてしまう。

Manon Lescaut第3幕ではまたしても突然、売春婦として捉えられているマノンがアメリカの、当時のフランスの植民地であったルイジアナの流されようとしている。そこにまた現れたデ・グリュー。マノンと一緒にいたい一心から売春婦たちを送る囚人船に下働きとして乗り込んでいくが、第4幕ではなぜかデ・グリューとマノンがルイジアナの砂漠をさまよっているのだ。

おしまいは砂漠の果てで力尽きたマノンが、デ・グリューの腕の中で死んでいくという、なんともいい加減というか、あり得ないというお話。

Manon Lescautストーリーをはしょりすぎたといわれればその通りだが、もう少しなんとかならなかったものか。さらに、流されたルイジアナの砂漠をさまようというのもおかしい。ルイジアナといえば、ミシシッピーの河口で世界的な湿地帯。アマゾンのようなジャングルではないか。砂漠はありません。プッチーニがこの地をまったく知らなかったことの証拠でもあり、のちの「西部の女」の取材旅行でも東海岸にしか行っていないというエピソードも思い出される。

Manon Lescautといった不思議なヒット作で、いい作品が当たる、当たった作品はいいものだとは限らないのだが、さすがに音楽、アリアにはプッチーニの才能を見ることができ、第1幕のデ・グリューの「見たこともない美女だ」や、第2幕のマノンのアリア「この柔らかなレースに包まれていても」などは、美しく心に響く名曲で、それを聴くだけでもチケット代は高くないのかもしれない。

 

Manon Lescaut

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