佐山 透(さやま とおる)ドットコム
羽仁未紗のビバオペラ

羽仁未紗のVIVA OPERA  Ⅱ-11

NABUCCO

NABUCCO

この「VIVA OPERA」ももう20本以上になるが、スタート前から、最後の1本はぜひ『ナブッコ』にしようと思っていた。いまそのときが来て、これが最終回になる。  

NABUCCOなぜラストに『ナブッコ』を選ぶのか、深い意味があるわけではない。このオペラで歌われるただひとつの曲、合唱曲ほど、わたしの心に深く深く刻みつけられているものはないから。その1曲にために、わたしたちはいくつものオペラハウスを訪ね、ことに幾度かの挑戦ののちようやく入ることができたヴェネツィア、フェニーチェ劇場で出会った『ナブッコ』の感度は、いまも消えることがない。  

 

NABUCCOストーリーはかなり入り乱れていて、古代史、あるいは宗教史の造詣がなければ容易に理解できないものだが、そうでなくてもこのオペラが素晴らしく思えるのは、あくまでその1曲のおかげ。  

NABUCCO舞台は古代イェルサレムとバビロニア。イェルサレムは敵国バビロニアの王女フェネーナを人質にとって敵の侵入を防ごうとしているが、バビロニアの王、ナブッコはそれにもかかわらずイェルサレムに攻め入ってくる。

そこにナブッコのもうひとりの娘、アビガイレが絡む。アビガイレは自分が奴隷女に産まされたため、正妻の子フェネーナに敵愾心を燃やしており、激しい戦いののちのバビロニア軍が勝利をおさめたのちに、父ナブッコを投獄し、フェニ―ナに死刑を宣告して、自分が王女の地位を得ようとする。  

NABUCCOそこにナブッコの許しを乞う祈りが天に通じ、イェルサレムはユダヤ人に返し、ナブッコはバビロニアの正しい王として君臨せよ、との神託が下る。  

命運尽きたアビガイレは毒をあおり、ユダヤ人たちはイェルサレムに帰り、ナブッコは名君としてバビロニアを導いていく。  

 

NABUCCOという物語は旧約聖書によるもので、ユダヤ人たちにはおなじみのものだが、わたしたちが心奪われるのは、おしまいに近い場面で、囚われのユダヤ人たちが遠い故郷を思って歌う合唱曲「行け、わが想い、黄金の翼に乗って」。  

静かながら深く心に染みいるワルツ曲は、このオペラの初演からたちまちひとびとの心をとらえ、イタリアの第2の国歌とまで称えられるほどになった。  

NABUCCO故郷に思いをはせるユダヤ人の望郷の念が、オーストリア(つまりハプスブルグ帝国)からの独立を願うイタリア人の民族意識に深く通じていたといわれるが、実はこのオペラの初演と、ヴェルディが住んでいたミラノ公国に独立運動の蜂起がみられたときには、かなりの時間差があったはずだというひともいる。  

いずれにしても『ナブッコ』の多くの舞台で、この曲に限ってアンコールがかかることでもわかるように、「行け、わが想い、黄金の翼に乗って」が万人の心をとらえていることに間違いはない。  

オペラだけに限らず、わたしが聴いたあまたの曲の中でも、ナンバーワンといってもいいこの曲、そしてこのオペラを最後に思い出させてくれた2年間の「VIVA OPERA」に改めて感謝します。

 

NABUCCO

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