佐山 透(さやま とおる)ドットコム

WEEKENDLESS II - 2

    

ゴルフ再開の予感

少しずつトヨスにも慣れてきた。というより、私としては予測していたこと以上にいくつもの発見があって、新しいおもちゃを買ってもらった子供のように、毎日が面白くて仕方がない。
 しかしこんな気持ちは私たちだけで、ひとにはよるが、他人にはまるで関心がないというか、むしろ不快感を与えるものでもあるかもしれない。
ゴルフ再開の予感 トヨスという新しい場所で新しい暮らしを始めましたよというと、反応は大きくふたつに分かれる。多くは、よかったね、素晴らしいね、うらやましいな、と素直に応じくれるが、中には、え?どうしてそんなところに、とか、埋立地は地震が怖いよ、トヨスって地質汚染があるんじゃないの、などネガティブなリアクションもある。豊洲という場所は、IHI(石川島播磨)跡の東豊洲とと東京ガスの跡地の西豊洲があり、地質汚染は遠くふた駅も離れた西のエリアなのだが、そうしたことは意識的に無視している。悪意はビシビシ。
 こうした拒否反応に接するたびに、これは日本人の特性ではないのかなと思う。素直に共感できない。なにかいいたくなる。その底にあるのは無意識な嫉妬ではないかと思うのだが、それをいうと火に油状況になりそうなので、ただ、気の毒なひとだ、と呟くにとどめておく。
 だから、私ならそんなところには住まない、といわれるたびに、そうだね、高いからねといい返す。お前には買えないだろうという最高に根性悪な気持ちだが、陰に、高層ビルだから、という逃げ道は用意してある。
 必ずしも嫉妬からではないだろうが、なにかしらネガティブらないと気が済まない日本気質は、ゴルフトーナメントでも感じられた。誰かが少し長いパッティングを打つ。すると日本人ギャラリー、あるいは同伴プレーヤーのほとんどがいう。あ、強い。あーあ、弱い。
 しかしアメリカ人なら、まず間違いなく、それがどんなに遠くて無理なパッティングでも、声に出して、
 「入れ!ゲッティンホール(Get into the hole)!」
 入るわけがないじゃないかとは思うが、ポジティブな反応は素敵だな。嫉妬するか張り合うか、と、共に楽しもうとするかの違いだろう。
 昔、周囲のひとたちのこのような気質に触れ、あるところで「日本人の三み一体思考」と書いたことがある。「三位一体」ではなく「三み一体」。つまり、「妬み」「僻み」「逆恨み」の「三み一体」。いやだなぁ。と書いたのだが、そのためたくさんのひとの陰湿な非難を浴びたのも事実だった。
 そのことを思い出す今日この頃であります。

 

というわけで、といっても少しも続かないが、ま、ゴルフの話がちょっと出た関係で、今回はゴルフの話をしようか。
 新しい住まいから車で15分。東京湾にぴょこんと飛び出した若洲地区の先半分に広がるゴルフコースが若洲リンクス。20年ほど前に岡本綾子の設計でオープンした唯一の都営コース。そこに出かけてみた。
 オープン当時、ゴルフ界で大きな顔をしていたこともあってご招待にあずかり、2、3回はプレーしたことがあるが、そのころは埋め立てたばかりで地下からガスが噴出する恐れがあるからコース内禁煙。芝も木もまだまだ育っておらず、やたらに風の吹くイマイチなコースだった。
 ところがいま訪れてみると、せせこましさのまるでないワイドオープンなコースには、適度に樹木も育っており、芝付きもほぼ完ぺき。さわやかな風が吹き抜けるそこは、客が少ないせいもあって、南カリフォルニアかどこかの高級リゾートの感じさえする。日本の2流コースにこそありがちな、妙に背伸びした名門意識も感じられないし、都営ということの営利目的ではないのどかさが随所に表れていて、アメリカ帰りのゴルフおやじとしては大いに気に入ったわけだ。ここならときどきプレーしてもいいかな。
ゴルフ再開の予感 都営なので、プレーするには2か月前から予約受付。4人ひと組で、全員の住所氏名を書いて申し込むなどというお役所仕事ぶりはあるが、なに、おいらは東京都民で、地元の江東区民で、しかも立派な高齢者。なにか文句はあるかということで、おひとりでも空きがあればほかの3人かふたりの組に入ってプレーすることができますよ、という言質をしっかり取ってやった。今日は練習場だけにして、連休前に改めて来てみよう。
 と考えて気がついた。ゴルフにこれほど胸をときめかすのは実に久しぶりだ。
 大昔はテニスボーイだったこともあって、競技テニスから遠ざかったのちもゴルフには関心があまりなかった。パリから帰ってきた30歳くらいの頃、一応ゴルフデビューはしたが、あくまでも付き合いの枠は出ず、どこかの出版社、編集部、テレビ局、芸能プロダクションなどのコンペに招ばれて行く程度。コンペの前日、ゴルフクラブにカビが生えていたり、グローブ、ボールがなかったりして大騒ぎ、といういい加減なゴルファーだった。
 40歳過ぎてから、頼まれてゴルフ誌に文章を書くようになり、やがてはミイラ取りがミイラになってゴルフ界にのめり込むようになっても、ゴルフそのものにはあまり熱心ではなかった。面白くなかったのだ。
ゴルフ再開の予感 それが50歳過ぎてアメリカに渡り、こともあろうにゴルフのメッカともいわれるカリフォルニアはパームスプリングスに10年間住み、かの世界的なPGA WESTのメンバーになれたこともあり、特に後半の数年間はゴルフにしっかりつかまってしまった。用がないときは、というかパームスプリングスにいるときは週に4回も5回も、夏場には朝と夕方の2回もコースに出ては球を打ち続け、その熱中期間のおかげで、日本にいるときはかなりインチキなハンディキャップで14だったのが、本場のハンディで7まで上達した(インディックス7・2)。
 遅すぎた開花ではあったが、懐かしいのはそのころ出場したクラブ競技のマッチプレー。全米シニアオープンの予選の予選を兼ねていたのだが、その2回戦でなんとホールインワン、エースを出してしまった。
 応援に来てくれていた多くの友人たちは大騒ぎしていたが、その騒ぎのプレッシャーから残りのホールは負け、負け、負け、またも負け。フロントナインでフォーアップ、バックナインでシックスダウン。17番でダウンドーミーというばかみたいな試合をして、この意味でも記録に残る業績を残したものだ。
 そんなゴルフおやじもニューヨークに移った60歳で、まずほとんどクラブを置いた。マンハッタンに住んでいればそうなるのは当然で、冬の5か月はコースクローズ、夏は暑くてそれどころではない。大体年の3分の1はヨーロッパ。ゴルフはやめたも同然だった。
ゴルフ再開の予感 そして3年前日本に帰って、これからは開き直って老人ゴルフかな、と八王子のコースのメンバーになり、1年ほどは月に1、2度は出かけていたが、それも次第に間遠になり、この1年ほどはまるでコースに出なかった。
 久保田千春さんという、去年まではゴルフダイジェスト誌、いまはフリーランスのゴルフジャーナリストとして活躍中の友人が、20年前から、親しいジャーナリスト、作家、評論家、プロゴルファーたちを集めて年一で開催しているクボタカップ。これに昨年末参加して、ワタクシ、こともあろうに100叩き。仲間の高橋三千綱氏に、なに、おじさん、101?などと大声で叫ばれ、もうやめたと心に決めたのでありました。
そしていま、東京湾の海風を受けて思うのであります。ゴルフをやめたのはやめた。クラブ、捨てなくてよかった。高かったんだよ。

 

ゴルフコースの少し高い場所から、木立ち越しに海が広がっている。
 すぐ近くを、白いモーターボートが舳先を浮かせて流れるように走り抜けていった。格好いい!
 モーターボート、プレジャーボートというのか。あれもいいな。面白そうだな。始めてみようかな。

 

ゴルフ再開の予感

 

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